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技術情報

日本特殊研砥の弾性砥石

 一般の人に弾性砥石の説明、というより砥石そのものを説明することはむずかしい。教科書風に言えば、砥石は「砥粒」と呼ばれる硬い粒、「結合材」と呼ばれる多数の砥粒を結びつける接着剤および「気孔」と呼ばれる適当な大きさの空間から構成されている。

 このうち砥粒は、ダイヤモンド、酸化アルミニウム、炭化ケイ素などそれらの構成元素で大きく分類されており、加工目的に合わせて種類と大きさが選択されている。

 結合材は砥石全体の性質を決定する要因であり、ビトリファイド(陶磁器質)、レジノイド(フェノール樹脂)などがよく知られている。弾性砥石は、この結合材にポリビニルアルコール(以下PVAと呼ぶ)、ポリウレタンなどの軟質樹脂を使用したもので、軟らかい=弾性のある性質が最大の特徴である。

 問題は気孔である。気孔、またはその役目をする空間は明確な定義がない。したがって形状、大きさ、砥石中に占める容積は全く自由であり、種々のアイデアが生かされることになる。

 日本特殊研砥の弾性砥石も大きくは気孔形成方法で分類出来る。PVA砥石、FBB砥石と総称される砥石は、ポリビニルアルコールのスポンジ構造が母体となり、その骨格の中に無数の砥粒を保持してものである。家庭の食器洗いに使用されるウレタンスポンジにびっしり微小な砂が詰まっている状態をイメージしてもらえばよい。他方UB砥石、ホイールバフ、イトバフと呼ばれる砥石、バフ類は、まず砥粒群をPVA繊維中に固定し、これを適当な長さに揃えた上で、種々の接着剤で固めている。繊維をランダムに配置することにより特殊形状の気孔(空間)が出来るわけである。

 砥石は単純である、なぜなら砥粒、結合材、気孔と3つの要素しかない、という見方もあるが、それゆえに選択する素材、形状の自由度が多く、世の中に数え切れないほどの種類が存在している。

 日本特殊研砥では、創業以来スポンジ構造製品、繊維状製品のいずれも素材はPVAにこだわって製品開発をしてきた。PVAそのものは、決して新しい素材ではないが、分子構造からくる適度な弾性、研磨におけるすぐれた特性から多くの製品を生み出している。実際の製品化にあたっては、PVAを素材にしているものの、PVAそのものの改質、エポキシ、ウレタンなど他の樹脂との複合化により、多様な性質の「結合材」で砥石構造を作り出している。日本特殊研砥では多様な性質の定量評価基準として、砥石物性値データベースを蓄積しているが、これについては次回に報告したい。

 現状の日本特殊研砥製弾性砥石の用途は、墓石の研磨からハードディスク用アルミ基板の研磨まで極めて幅広い用途であり、要求される特性(砥石の性質と研磨特性)も広範囲に渡っている。また要求される特性も常に変化している。これらの要求を満足させるために、日常の努力、チャレンジはもとより、時代を先読みする「感」も製品開発には必要である。砥石は宿命ではあるが、自分自身を砕きながら相手をきれいにしていく謙虚さをもっている。われわれも常に謙虚さをもちながら果敢に挑戦していきたいと考える。

山田

バナースペース

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